浮世絵ファンタジー バス独唱とピアノのための私抄《冨嶽三十六景》 文化庁芸術祭協賛公演ライブ

カメラータⒹCDT1089 ¥2700

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■各誌からご高評をいただきました。

レコード芸術 2012年8月号

ムソルグスキーの《展覧会の絵》の向こうを張ったわけではなかろうが、北斎の「冨嶽三十六景」の音楽家は意表を突く。なるほどこういうてもあったかとはたと手を打ちたくなる。さらに北斎の絵に合わせて歌詞がつけられ、声も加わる。北斎の版画自体はほとんどの富士が小さく見える遠景の静謐なたたずまいと、それに気を留めることなく孜々として仕事にいそしむ当時の庶民の活力との対象をみごとに隈どっているが、テキストは庶民の屈託のないユーモラスな生き方に寄り添って北斎の版画と違和感がない。音楽も当時の日本民謡特有のリズムを存分にとり入れ、江戸時代の情景を活写しようとしている。
曲は全36景のうち半分の18景を抽出して、途中にピアノ・ソロの間奏曲が入る。それだけでなく第7曲〈上総の海路〉では帆をふくらませる風の音や帆柱のきしむ音、第8曲〈神奈川沖浪裏〉では波の怒涛の音、第13曲〈山下白雨〉では雷鳴などの効果音も入り、随所に変化の工夫が凝らされている。また全18景の版画がブックレットに収められているのもありがたい。
バス・バリトンの佐藤征一郎はつねに前向きの明るさと闊達さを失わず、当時の庶民の生き方と一心同体化して大胆に生きるよろこびを放射している。第15曲〈凱風快晴〉では壮大な富士のたたずまいへの畏敬の念と賛歌がほとばしり、一方第17曲〈甲州石班沢〉ではしんみりとした感慨にも欠けない。 (喜多尾 道冬 氏)

葛飾北斎の「 冨嶽三十六景 」から18の絵が選ばれ、それに応する関根榮一の詩に寺島尚彦が作曲した、バスとピアノのための歌曲集で、1996年に平成8年度文化庁芸術祭協賛として行われたコンサートで歌われ、録音されている。歌っているのはこの歌曲集の依頼者でもある佐藤征一郎だ。
第1曲が〈江戸日本橋〉で、第18局の〈尾州不二見原〉まで続く。もちろん〈凱風快晴〉のように有名な絵はもれていない。CDには、モノクロだと少々小さいのだけれど、北斎の絵とそれに対応する詩が付けられていて、絵から詩、そして歌曲という流れがはっきりとわかる。
絵、というか描かれている場面の説明みたいなのもあり、詩は新たな創造というより、絵への賛辞に近い。そして歌は、シュプレッヒシュティンメではないのだけれど、歌うというより語りに近づいている。それを佐藤征一郎は完全に歌いこなしていて、ひとつの世界が聴こえる。絵を素材にして別の芸術としての歌曲集を作り出したのではなく、あくまで北斎の絵そのものへの賞讃に徹しているところが、日本的やり方というか、奥床しい。当然第8曲〈神奈川沖浪裏〉のようなドラマティックな絵では歌も起伏を増し、当時の佐藤征一郎の力量が、遺憾なく発揮されることになる。これまでの文化庁芸術祭音楽部門の成果として、大切な記録でもある1枚ではないだろうか。 (堀内 修 氏)

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