2020年4月25日、 佐藤征一郎:ICLG国際カール・レーヴェ協会(ドイツ)名誉会員記念として、日本語対訳朗読付3枚組CDドイツのバラード作曲家「カール・レーヴェのワンダーランド」発売しました。

各誌からご高評をいただきました。

『ぶらあぼ』 2020年6月号掲載

外国人として初めて国際カール・レーヴェ協会名誉会員に迎えられた佐藤征一郎が、1985~2008年に行ったレーヴェ全歌曲連続演奏会のライブ録音。本作には、1985~90年の8公演の演目、すなわち初期の作品(有名な「魔王」を含むop.1~13)が、詩の朗読と歌唱を交互に置いた形で収録されている。このドイツのバラード作曲家の多様な世界を伝える偉業の貴重なドキュメントであり、入念な演奏ノートを含めて資料的価値も絶大。朗々として迫真的な歌唱も、シューベルトとは異なるレーヴェの魅力を知らしめる。(柴田 克彦 氏)

『音楽現代』 2020年7月号掲載

リート&バラードを多く世に送ったレーヴェの連続演奏会(1985~1990)のライブをCD3枚組に収録。岸田今日子など名優の歌詞朗読を置いてから一曲ずつ歌うという贅沢な演奏であり、名歌手佐藤征一郎の声音も良く通るが、評者が最も魅せられたのは「歌いまわしの工夫」である。例えばCD1#6〈魔王〉のくどくない感じ、CD1#12〈あこがれ〉の淡い明るさ、CD2#2の大曲〈ヴァルハイデ〉における声のドラマの持続力、CD3#20の力尽きた巡礼で低音域を絞った声量で深く響かせるさま(ピアノの牧野縝もタッチが控え目)など、特に心に染みる解釈に。「演奏家の格」を強く感じされる上品な歌いぶりは現代の聴衆にも届くと思う。(岸 純信 氏)

『レコード芸術』 2020年7月号掲載

確かにカール・レーヴェのバラードは他に類のない「ワンダーランド」を作っていて、この3枚組はその世界を日本において明らかにした、ひとつの偉業と見るべきだろう。1985年から90年まで、佐藤征一郎が行ったコンサートのライブが、この3枚に収められている。まず詞の朗読があって、次に歌われるスタイルもそのまま入っている。字幕のほうが合理的かとも思うが、このスタイルもコンサートの特徴だったから、存分に語られる物語としてのバラードを味わうことができる。ただし歌に合わせた会場の音響のせいか、語りは少々聞きとりづらい。歌によって、あるいは時期によって、佐藤征一郎の歌唱に好不調はあるものの、きちんと、そして精密に、レーヴェのバラードの魅力を伝えようとする姿勢は変わらない。その姿勢と情熱を受けとめようとする者には、シューベルトからシューマンと続くドイツ歌曲とは別の、ロマン的な物語であるバラードの魅力が、間違いなく伝えられるはずだ。一番の聞きものはやはり大作《ヴァルハイデ》で、朗読と歌手とでどっぷり起伏に富んだ物語の世界に浸れる。だが、短い作品にも佳作があり、いずれもていねいに歌われている。広く受け入れられているとはとても言い難いレーヴェのバラードの世界だが、日本では紹介の試みが続いていて、その土台となっている演奏が、ここにある。(堀内 修 氏)

『レコード芸術』 2020年7月号掲載 推薦

 佐藤征一郎と言えば、1970年代から90年代にかけて活躍した日本を代表するバス。70年代にはケルンとフライブルクの歌劇場で歌い、国際的にも認められていた。オペラ歌手としての活動の一方、リート歌唱でも優れた成果を示し、レーヴェのバラードに傾倒。それを認められて、2014年にドイツ国際レーヴェ協会から名誉会員に迎えられたという。当盤は、それを記念してのもので、80年代後半のライブから29曲が集められている(3枚組!)。収録時の演奏会は、歌曲と詩の朗読で進められたが、本盤では、それがそのままディスク化されている。朗読を担当しているのは、長岡輝子(声楽家の中山節子が一部代演)と岸田今日子。詩の内容を理解しながら歌曲を聞く、という配慮が、当時として新しく感じられる(そして、名女優たちの朗読が素晴らしい)。演奏も、本格的な内容。声は張りに満ち、円熟期(40代後半)の充実した響きが聞きとれる。一方歌唱には、明確な形式性とメソッドが感じられ、語りも演技性に満ちている。レーヴェはもともとバスに向いているが、総じてドラマの勘所を押さえた歌いぶり。佐藤の演奏ノートがブックレットに掲載されているのも、歌手の仕事部屋を覗くようで興味深い。圧巻は、30分近くかかる大作《ヴァルハイデ》。15分の朗読の後、演奏が始まるが、佐藤は長丁場を飽きさせることなく、豊かな声で「演じ切って」いる。音は一部かなり貧弱だが、メッセージ性の高い記録である。(城所 幸吉 氏)

『毎日新聞-芸能』 5月19日夕刊掲載 特薦

佐藤征一郎(バス・バリトン)、長岡輝子(朗読)、宮原峠子(ピアノ)他/カール・レーヴェのワンダーランド(ライブノーツ)
日本で行われたカール・レーヴェの連続演奏会の第1回(1985年)から第13回(90年)までの中から佐藤征一郎の歌唱を集めたライブ録音の3枚組み。偉大な演奏であり偉大な記録である(ドイツにおいてもレーヴェの連続演奏会の企画は聞いたことがない)。まず詩の和訳が朗読され、理解の場が整えられる。佐藤の奥行きのある声、真摯(しんし)で豊かな表情によって、レーヴェの深い構造、思いもかけぬ音楽的展開の見事さ、詩に隠された本質を剔出(てきしゅつ)するひらめきが余すところなく表出されている。ドイツ歌曲志向を持ったピアニストたちも一体となって、レーヴェの知らざれる魅力を堪能させてくれる。もちろん、ゲーテの詩に付けた《魔王》も入っている。この演奏を聴くと、ワーグナーの言葉「君たちはシューベルトの《魔王》が一番だと思っているが、レーヴェの曲はそれよりもずっと優れている。シューベルトの《魔王》は必ずしも真実ではない。しかしレーヴェの《魔王》は真実だ」との評言が納得できる。長年の研究成果を反映した佐藤による詳細な解説も貴重だ。(梅津 時比古 氏)

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